お知らせ
第1回 筋・筋膜性歯痛
当院で行っている「口腔顔面痛外来」について、1年間に亘り解説します。
非歯原性歯痛(ひしげんせいしつう)の患者様について
第1回 筋・筋膜性歯痛
「非歯原性歯痛」とは、歯とは無関係の病気でありながら「歯が痛い」と訴える病気のことです。わかりやすくいうと、「歯の神経をとったのに歯が痛い。」「神経の処置が長引いていて、患者様も先生も困っている。」「歯を抜いたのに歯があるように痛い。」といった症状です。
一方、虫歯があったり、歯肉に炎症があったりと、歯に原因がある痛みを「歯原性歯痛」と呼びます。当院では、非歯原性歯痛に詳しい、日本口腔(こうくう)顔面痛学会の元理事長で、慶応大学医学部・口腔外科・非常勤講師の和嶋浩一先生と、非歯原性歯痛の患者様と向き合っています。
非歯原性歯痛(ひしげんせいしつう)の分類を示します。
1)筋・筋膜性歯痛
2) 神経障害性疼痛
3)神経血管性歯痛
4)特発性(非定型)歯痛
5)上顎洞性歯痛
6)心臓性歯痛
7)精神疾患による歯痛
8)その他のさまざまな疾患により生じる歯痛
非歯原性歯痛(ひしげんせいしつう)の中でも、筋・筋膜性歯痛の患者さまは非常に多いことが特徴です。筋・筋膜性歯痛は、食べるときに働く筋肉の疲労により生じた筋痛が「歯痛」のように感じられるものです。
なぜ筋肉の痛みを歯に感じるのでしょうか?
首から上は神経が豊富で、複雑につながっており、脳がどの神経から来た痛みなのかを間違えてしまうといわれています。
わかりやすくいうと、口の中は、痛い場所と原因の場所が違うということが生じやすいということです。
よくみられる筋・筋膜性歯痛の患者さまの状況はこんな感じです。
「歯に痛みがあり、歯科医院や大学病院をまわりましたが、虫歯などの明らかな原因が見つかりませんでした。歯の神経を抜いてもらうなどしても、痛みは治まらず、痛みは1年以上続きました。痛みは日によっても違うし、1日の中の時間帯でも違います。
そんなに気にならない時もあれば、ずっと気になることも。
痛みがあることがふつうになると、痛みを感じないと『そんなはずはない』と思って、痛みを探し始めるという悪循環。外に行きたくなくなり、痛みにとらわれた生活でした」
診断は、歯に原因がないかを確認したうえで、医師が食べるときに働く筋肉の周辺を触診する(筋肉をさわって調べる)などをしながら、痛みのポイントを探って診断をつけます。患者さまは圧倒的に女性の方、年齢的には50~60代の方が多いようです。
実は、この触診方法が難しいといえます。私自身も、留学先で触診を教えてもらいましたが、和嶋先生から直接教えて頂くと、多くの発見があり、診断精度が格段に上がりました。
和嶋先生は、「もしかして歯が原因の痛みではないのかもしれないと考え、
まずは、『非歯原性歯痛ではないでしょうか?』と尋ねてみて下さい」と啓蒙しています。
また、もし、筋・筋膜性歯痛にご興味がある歯科医師の先生方がいらっしゃいましたら、触診実習希望を明記したメールを頂けましたら、対応させていただきます。