むし歯・ムシ歯・虫歯
齲蝕(うしょく)症・dental caries
歯の命(俗に神経)を守るためには、痛くも何ともないうちに虫歯の治療を受けることが重要です。虫歯は痛くない病気です。虫歯が小さくても大きくても痛くありません。痛くなったら、虫歯ではなく、神経の病気にかかったと考えて下さい。その場合、基本的には神経をとることが必要となります。歯が生きていれば、神経が守られれば、虫歯で抜かれることはありません。
人の口の中には300〜400種類の菌が生息していると言われています。その中の菌の中で虫歯を作る菌がいます。むし歯の原因細菌は、ミュータンス菌とラクトバチラス菌です(microbial disease)。むし歯とは、歯の硬い部分がむし歯の原因細菌が作り出す酸によって溶かされる病気です。細菌ひとつひとつがむし歯を生じる訳ではなく、プラークという口腔内細菌のバイオフィルムがむし歯を生じ、コッホの5原則すべてに当てはまる感染症ではない(混合感染)ことが、むし歯の根絶を妨げています。
むし歯は、次の図で示す4つの条件が重なって生じる病気であると考えられています(multifactorial disease)。従って、4つの条件を止める努力がむし歯予防の基本となります。
さらに、むし歯の進行については次のように考えられており、いったん溶かされたむし歯の進行を中断する試みも行われています。
- ●むし歯の危険因子と防御因子のバランスでむし歯は進行する。
- ●むし歯の危険因子が促進すると、歯の硬い組織は溶ける(むし歯の進行)。
- ●むし歯の防御因子が促進すると、歯の硬い組織は修復に至る(むし歯の回復)。
臨床上、むし歯を完全に除去したことを保証する世界基準はありません。
従って、医療機関によってその基準はさまざまです。
歯周病(昔の歯槽膿漏)
歯周病の定期処置の価値について
Axelssonの研究は、20~65歳までのスウェーデン人、550人を30年間追跡調査した結果から、定期検診・定期処置を受けていた患者さんは明らかに歯が残っていることを示しました。下に研究の内訳をわかりやすく表にしました。
定期処置の 開始年齢 |
30年間で 失った歯の数 |
調査 年齢 |
---|---|---|
20~35歳 | 0.4 本 | 50~65歳 |
36~50歳 | 0.7 本 | 66~80歳 |
51~65歳 | 1.8 本 | 81~95歳 |
定期検診・定期処置を受けている患者さんは明らかに歯を失っていません。定期検診・定期処置がいかに大切で、有効であるかを示しています。できるだけ早い年齢で歯周病の基本治療を受けた上で、定期検診・定期処置を始めることがいかに大切であるかがわかります。
症状
歯周病とは、歯周病の原因細菌により、歯ぐきが歯からはがれて、歯を支えている骨を失う病気です。
歯周病の原因論
第1の原因 | プラーク(歯周病の原因細菌の集まり・バイオフィルム) |
---|---|
第2の原因 | 局所的原因 歯石・唾液の欠如・咬合性外傷 |
全身的原因 | 遺伝・易感染性・ホルモン異常・服用中の薬・血液疾患・栄養状態 |
治療
保険診療にそって治療を行います。日本歯科医学会策定の、「歯周病の診断と治療に関する指針」にそって、歯周病の治療を行います。
しかし、重度の歯周病で再生療法が必要な患者さんや、進行が早いタイプの歯周病患者さんについては、保険制度にない検査や治療が必要となることもあり、その場合は自費診療について説明を行います。
治療内容は、大きく分けて以下の2つです。
「非外科療法」 と 「外科療法」
知っておいていただきたいこと
全身の病気(肺炎・心臓病・糖尿病・服用中の薬等)と関連があります。まれですが、歯肉ガンと区別がつきにくいことがあります。治療期間がかかりますが、いったん定期処置になりますと歯が抜かれる可能性が低くなります。
歯周病の進行は以下の図で説明されています。したがって、歯周病の治療や予防を効果的なものとするために、患者さんによって、そして場所や歯周病の種類によって、あてはまるリスクを個別に考える必要があります。
予防歯科
当院における歯科の予防処置は、単なるむし歯の予防処置ではありません。 あらゆる歯科疾患や口腔の異常を早期発見し対処することも含んでいます。 そしてまた、歯や口腔が正常な形や働きを一生涯持ち続けられるようにするための必要なあらゆる処置が予防処置です。 当院における虫歯治療の最大の目標は、神経(歯髄)を残すことです。 子供の歯は大人の歯と違って、神経をとった死んだ歯は決定的なダメージを負うこととなり、治療に大きな限界が存在します。 「大人の歯と生え換わるまでできる限り処置をしましょう。」という説明をせざるを得ません。 ですから、むし歯ができないようにすることも大切なむし歯の予防処置ですが、たとえむし歯になった歯でも神経の病気を引き起こさないようにすることはより重要な予防処置となるのです。
予防は、1次予防(病気がはじまる前におこなわれる )と、2次予防(治療を終えた後に、病気の再発を防ぐためにおこなわれる)に分けられます。
当院では、歯を削った時を第1の歯の死、そして神経を取った時を第2の歯の死ととらえて、 希望者には1次予防と2次予防を並行して行います。まずはご相談を。
歯・口・あごの痛みや
違和感と闘う
1. 顎関節症について
症状 | 口が開かない、口を開けると音がする、顎が痛い |
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2. 口腔顔面痛
症状 | 舌が痛い・ピリピリする(舌痛症)、歯を抜いたのに歯が痛い、どこで咬んでよいのかわからない、歯が痛いのにどこへいっても原因がわからない、治療したにもかかわらず痛みが続き、主治医もわからない。 |
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なかなか治らない
「歯・口・あごの痛みや違和感」
昨今、心理的ストレスや脳内の情報伝達異常が原因となって、顎関節症、口内炎や舌の痛み、咬み合わせの異常を訴えて来院される患者さんが増えています。当院では、「口腔顔面痛学」という考え方のもと、内科・脳神経外科・耳鼻咽喉科・頭痛専門医・ペインクリニック・心理療法士などと連携をとって治療にあたっております。
※咬み合わせ治療は対応していません。
顎口腔領域の病気への対応
口腔外科
●親知らずなど、一般歯科では困難な抜歯
●口や舌、またはあごのできもの、腫れや痛み
●歯や口腔内の傷からの感染による炎症
●歯の破折や脱臼
●顎の骨折
※設備等により当院にて治療が困難な場合は、大学病院や連携総合病院へ責任をもって紹介します。
口腔内科
口腔内科とは?
●顎口腔領域に影響を与える異常や病気に対する診断と管理または治療
●口腔粘膜の異常や唾液腺の病気など
●有病者(高血圧症・糖尿病など)の口腔ケアまたは歯科治療
対象
●口腔粘膜疾患
●口が渇く(口腔乾燥症)
●口臭
●金属アレルギー
●口内炎
●くいしばり・歯ぎしり、およびくいしばり・歯ぎしりによる症候群
●味覚障害
●いびき・睡眠時無呼吸
※設備等により当院にて治療が困難な場合は、大学病院や連携総合病院へ責任をもって紹介します。
口腔画像診断
単純レントゲン写真・頭頚部領域のCT(歯科用および医科用)・頭頚部領域のMRIについて、撮影するだけではなく、頭頚部診断専門歯科医師による読影・診断を行います。希望者に対しては、画像について説明の時間をとります。
悪性腫瘍に対する手術・化学療法・放射線治療中の歯科対応
前中後における歯科治療および周術期管理
舌痛症とは?
「舌痛症」とは、舌に外傷や炎症、腫瘍など明らかな病気が見当たらないにもかかわらず、舌の痛みが続く病気をいいます。もちろん舌ガンではないのですが、不安を抱えて来院されるケースが増えています。
舌に痛みを生じる病気には、以下のものが挙げられます。
- ●外傷によるもの
- ●炎症性のもの
- ●腫瘍によるもの
- ●欠乏症によるもの
- ●原因不明(いわゆる舌痛症)
舌痛症の治療方法は?
舌痛症の原因は未だ十分に解明されていません。現在までの科学的知見からできる限り有効と考えられる治療法を提案します。消炎鎮痛剤(痛み止め)や口内炎の軟膏では効果を期待できません。注射による神経ブロックなども効果が疑問視されています。心の病気でもありません。現在、最も有効な治療法は抗うつ薬を中心とした薬物療法です。しかし、「うつの薬」といった偏見が患者さんばかりでなく、医療従事者の間にも根強いために普及していません。残念ながら100%の患者さんに効果があるとは言えません。また、日本では歯科医師が抗うつ薬を処方できないため、当院では、口腔顔面痛学について理解していただける連携神経内科医にお願いをして処方していただいています。当院における薬物療法に対する考え方は、「依存性が少ないこと。」その代わりに副作用があります。依存性もなく副作用もない特効薬は残念ながらありません。「口腔顔面痛学においてある程度コンセンサスが得られていること。」以上です。私自身は、おそらく今後舌痛症は、舌に生じた特発性疼痛であるとの考え方が主流になると考えています。